7/19㈯~8/1㈮ ※火曜休館

2024年 タイ
2時間6分
配給:アンプラグド
監督・脚本
パット・ブーンニティパット
製作
ワンリディー・ポンシティサック
ジラ・マリクン
共同脚本
トサポン・ティップティンナコーン
撮影
ブンヤヌット・グライトーン
編集
タラマット・スメートスパチョーク
音楽
ジャイテープ・ラールンジャイ
出演
プッティポン・アッサラッタナクン
ウサー・セームカム
サンヤ・クナコーン
サリンラット・トーマス
ポンサトーン・ジョンウィラート
トンタワン・タンティウェーチャクン
エム、お年寄りが本当に欲しいものってわかる?
それはね…。
ゲーム配信で楽して稼ぐ、と大学を中退、スーパーで働く母親に新しいゲーミングPCをねだるエムは、まさに今時のタイの若者。親戚一同の清明節のお墓参りも嫌々で、おばあちゃんには叱られっぱなし。ある日、従妹のムイが寝たきりのおじいちゃんの介護を一人で引き受けていたことで豪邸を相続したのを目の当たりにし、同時におばあちゃんのガンが進行しているのを知る。チャンスとばかりに家に上がりこんで同居を始めるエムだったが…。

こんな普通のわたしが憧れの彼と急接近、ドキドキ!みたいなやたらピンク色のアイドル映画が10代の夢の具現化なら、古き良きライフスタイルに若者が影響されてくれる、観客ボリュームゾーンである中高年層の夢だ。ツボさえ押さえればヒットは固い。


が、そこは「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」(2017)以来「アジアのA24」と称されるスタジオGDH。病気の進行につれ、それぞれが自分のことに必死な親族間のあつれきが表面化するなど当たり前のことしか起こらないのに、先の展開がまるで読めない。そこにあるのが、華人ルーツの一族の習慣一つひとつ、家財のすべてに、この土地に来る前からの歴史が積み重なったまさに本物の暮らしで、「話の筋」ではないからだ。未舗装の路地に降り注いだ雨が上がり、すべての植物が息をつくその瞬間までが映し出されるような精度の映像には、たっぷりと豊かな時間が流れている。

ヘリから人がぶら下がったりはしないが、これこそが映画館で費やすにふさわしい2時間とさえ思える。普通の一般住宅、豪邸、高級ホテル、老人施設、古い店舗兼住宅、果てはお墓に至るまで、様々な人の暮らす様々な家を辿って見せるのはおそらく意図的なものだ。今やアジアで「昔ながらの不便さや素朴さ」が残っていると思われているのは日本の方なのに、こういう映画は今の日本ではむしろ作られないかも知れない。愛は正しさに評定を下すことじゃない。多分それが一番今、理解されにくい。
永井美津子
月刊ウインド2025年7月号より
《上映時間》
7/19㈯ 〇12:30~14:45
7/20㈰ 休映
7/21㈪~7/25㈮ 〇12:30~14:45 ※7/22㈫休館
7/26㈯~8/1㈮ 〇10:00~12:15 ※7/29㈫休館
