10/4㈯~10/17㈮ ※火曜休館

2024年 香港
1時間54分
配給:ツイン
監督・原作・編集
ハーバート・レオン『飛虎之潜行極戦』
アルバート・レオン『ツインズ・ミッション』
製作
アンガス・チャン
『トワイライト・ウォリアーズ 九龍城砦』
脚本
アナスタシア・ツァン『燈火は消えず』
オリヴァー・イップ『正義廻廊』
撮影
チョン・タイワイ『神探大戦』
アクション監督
コン・トーホイ『ツインズ・ミッション』
アクション指導
トミー・リャン『LOOPER / ルーパー』
音楽
チュー・ツァンヘイ『バタフライ・ラヴァーズ』
アンディ・チュン『ターンレフト・ターンライト』
出演
トン・ワイ『男たちの挽歌』
テレンス・ラウ『トワイライト・ウォリアーズ 九龍城砦』
フィリップ・ン『トワイライト・ウォリアーズ 九龍城砦』
セシリア・チョイ『返校 言葉が消えた日』
映画は最高、だけど現場は地獄だ!!
キン・フーの武侠映画があり、ジミー・ウォングが台頭し、ご存知ブルース・リー、アンジェラ・マオ、ブルース・リャン、サモ・ハン、ジャッキー・チェン、ユン・ピョウ、リー・リンチェイ、ドニー・イェンら見事な武技体術を発揮して映画界を盛り上げ、海外への進出も果たしてきました。ジョン・ウーやツイ・ハークらは映画監督として、ジャッキーやドニーは俳優として大記録的な成功を収めていますが、中国・香港映画では映画の完成のために命懸けで演出にあたる職人たちもおりますね。例えばハン・インチェ、ユエン・ウーピン、ラウ・カーリョンといった人たち。彼らの武術指導、殺陣・動作設計によってアクションが烈しく盛り上がりを見せ、そのバイタリティに魅せられて映画界へ進んで活躍している日本人が谷垣健治、園村健介、大内貴仁といった方々ですね。
というわけで、この映画で大御所アクション監督として登場して主演するのがトン・ワイです。俳優・武術指導・アクション監督の重鎮ですが、幼い頃『燃えよドラゴン』でブルース・リーから「考えるな。感じろ」と説かれていたのが彼ですね。そこへ『トワイライト・ウォリアーズ』で対決していたテレンス・ラウとフィリップ・ンが加わり、3人が中心となって現代香港映画界において新たなアクション映画が完成できるか、という体を張った演出・撮影ドラマが展開されます。


「香港映画はもう死んだ。撮影日数が減った。浮き沈みが激しい業界で、時代が移り変わり、嵐が吹けば火も消える…」事故によって映画界を離れていた”伝説のアクション監督”は新作映画の演出を引き受け、映画へ復帰する。しかし40年前の香港映画全盛期と現代では製作の事情が異なり、昔ながらの演出・指導が通じない。コンプライアンス&ガバナンスの制約に阻まれ、スタッフの士気や撮影スケジュールにも影響が出る。
「1シーンの撮影に3週間かける」
「いまの映画は3週間で完成させるもんだ」
「予算がかかりすぎる。残業するな」
「大声で指示しないとスタッフは従わない」
「大声で指示してしますが、皆は従っていますか?」

アクション映画、武術映画が最高に盛り上がっていた頃。スタントマンは「ノー」と言わない(言えない)。師匠の指示こそ絶対。成功に犠牲はつきもの。映画のためなら命を惜しまない。製作費や時間が足りなくても、とにかく必死に撮影して、1コマにも命懸け。映画は終わったと見くびられたくないから。
「いまどき、こんなやり方どうかしてるよ」…ハラスメントというやつですな。香港映画に限らず、映画業界に限った話でもありません。日本国内の労働環境でも騒がれています。社会のため、生活のため、安全のため。これを維持するための現場は地獄。昭和の人、平成の人、Z世代なんて言われる人。それぞれ感性が変わっていきます。意識が嚙み合わず、分かり合えない。嗚呼、昔は良かった(?)ね。
原恵一&水島努による『クレしん モーレツ!オトナ帝国の逆襲』は子どもたちを笑わせながら親御さんたちを泣かせていましたが、『スタントマン 武替道』はかつてジャッキーの『ポリス・ストーリー』に驚嘆して夢中になっていた映画ファンは見逃せません。これはアクション映画としては勿論、映画内幕ドラマとして面白いです。かつて人々は良くも悪くも熱狂的だったけど、今は「安く、手早く、安全第一」という労働意識。けれどもそれはそれで正しいあり方ですね。それは間違いとかじゃあない。そういう体制でも、苦しんでる人や、満足しない人たちがいる。どうしてでしょうか。労働とか環境とか、もっともっと健全に仕事しやすくなるためにはどうしたらいいのでしょう。

この映画を観たら、いかに世渡りが上手くいかないものか、皆が気分よく成し遂げていくことがどれだけ難しいことなのかを考えて泣けてきました。”香港映画復活”を期待している方、『トワイライト・ウォリアーズ 九龍城砦』を観た方は勿論ですが、日々一生懸命働いている方、仕事を鬱屈と感じた覚えのある方、かつて映画に夢中になっていた方、この映画を是非じっくり見届けてください。映画業界の移ろい、現代映画界の背景。身体を張った演出と演技を本気になって作っていく気迫。これを監督したのがレオン兄弟という双子のアクション俳優であるとのことだから、成程本気になって勝負に出た映画になりましたね。映画にも文法があり、暗黙の了解もある。一方で、映画は自由であるべきで、正解はない。とにかく追求すること、その姿勢は正しいものなのか。スタントマン、アクション俳優、動作演出家。プロフェッショナル魂の継承を願い、命を懸けるスタッフへ捧げられた白熱篇です。
宇尾地米人

《上映時間》
10/4㈯ 〇16:25~18:30
10/5㈰ 〇17:05~19:10
10/6㈪~9㈭ 〇18:30~20:35 ※火曜休館
10/10㈮ 〇18:45~20:50
10/11㈯ 〇15:00~17:05
10/12㈰ 〇16:05~18:10
10/13㈪~16㈭ 〇15:00~17:05 ※火曜休館
10/17㈮ 〇16:40~18:45
