『ダンサー イン Paris』

シネ・ウインド

「ダンス」という最も困難で挑戦的な企画

 踊りを撮る映画とは非常に繊細で難しい分野になります。動作、音響、衣装、照明など、まさに技術と芸能の集約。ダンスこそ芸術の集大成です。その撮影・編集となると、生半可な感性では捉えきれません。監督は『スパニッシュ・アパートメント』『ロシアン・ドールズ』『ニューヨークの巴里夫』などを発表してきたセドリック・クラピッシュ。ダンスの舞台・業界の記録撮影を経験し、何よりも自身がダンスの大ファンであることから、ダンサーの人生譚とステージの舞台裏を演出を熱望してきた念願の企画製作である。その監督熱は他の追随を許しません。

 さあ岐路に立たされた主人公がどのように動き始めるか。本物の俊英ダンサーであるマリオン・バルボーが活き活きと映画初主演してみせました。優秀なダンサーの挫折と再起を描くドラマですが、他館で上映されていた『裸足になって』に勝るとも劣らない感性が躍動する作品で、試写を鑑賞した方々から絶賛の声が相次いでいました。オペラ座のステージ表裏に人間ドラマの流動美で私たちのセンシティヴを揺さぶる見事な好篇です。(宇尾地米人)