6/14㈯~6/27㈮ ※火曜休館

2024年 ラトビア・フランス・ベルギー合作
1時間25分
配給:ファインフィルムズ
監督・製作・脚本・編集・音楽・美術
ギンツ・ジルバロディス
製作
マティス・カジャ
ロン・ディアン
グレゴリー・ザルツマン
共同脚本
マティス・カジャ
アニメーション監督
レオ・シリー・ペリシエ
音楽
リハルド・ザイプペ
音響編集
グルワル・コック=ガラス
制作進行
ニコラス・ドゥラトイル
ヴァージニー・ギルミノット
テオフィル・ロベルト
デジタルアート
コンスタンティン・ヴィスネヴスキ
アニメーション・スーパーバイザー
ピエール・マスケット
グラフィック・デザイナー
ポーラ・ボブロヴァー
「物語らない」ことの雄弁さ
当館にて4月に上映されたアニメーション映画『ロボット・ドリームズ』は、一切の台詞を排しつつ、主人公たちの心情を演出と選曲の妙で描ききり、感涙を禁じ得ない傑作だった。今年のアカデミー賞・長編アニメーション賞に輝いた『Flow』もまた、台詞ではなく、動物たちのアクションの連なりがことば以上に雄弁に物語る一作である。

人間の姿が消えた世界。途方もない洪水に襲われた幼い黒猫は、漂流していた小舟に迷い込む。カピバラやワオキツネザル、犬、ヘビクイワシ達を旅の道連れとして、黒猫はひたすらに流されてゆく…


ラトビア出身のギンツ・ジルバロディスが監督・脚本・音楽を手掛けた本作。主人公である黒猫始め、登場する動物たちは人間の言葉を使うことは無い。極力「擬人化」を避けて描かれるが、その「人間味」さえ溢れる描写には眼をみはる。大きな眼を更に開いて、初めて遭遇する世界の美しさと恐怖を凝視する黒猫。どこか大人の風格もあるカピバラ。物欲に囚われたワオキツネザル。集団の論理に従う犬。そして超然とした佇まいを見せるヘビクイワシ。個性豊かな面々が「団結」することなく、違いを受け入れて生きてゆく様は、『ひょっこりひょうたん島』の世界観にも通じる。

一見リアルに見えて、私たちが生きている世界から何処か遊離した自然描写は圧巻だ。押し寄せる水、天高く屹立する岩山と深い谷底。あてもなく漂流してゆく動物たちと荘厳にして無慈悲な世界との対比は、さまざまな読み解き方が出来るだろう。黒猫たちの旅の行きつく先に広がる光景を、ぜひ目撃していただきたい。
久志田 渉
《上映時間》
6/14㈯~6/20㈮ ※6/17㈫休館
①12:15~13:50 ②18:30~20:05
6/21㈯~6/27㈭ ※6/24㈫休館
〇14:50~16:25