おすすめ作品『茲山魚譜 チャサンオボ』

シネ・ウインド

3/12(土)~3/25(金) シネ・ウインド上映 ※3/15休館、3/22休映

 ★3/12(土)10:00の回上映後、荒木夏実さん(にいがた映画塾運営委員)トークあり

 ★上映時間→ https://www.cinewind.com/schedule/

 ★劇場受付と公式サイトで13日前より座席チケット販売中 購入はこちら→ https://cinewind.sboticket.net/

  

最果ての海には、幸せがあった―

水墨画のようなモノクロームで描かれる、美しき絆と風景

    

〇『茲山魚譜 チャサンオボ』のススメ〇

「韓国映画祭2022 第2弾」は、

海洋生物学書を著作した師弟を描いた傑作時代劇

  

韓国では有名な海洋生物学書「茲山魚譜(チャサンオボ)」。その完成に纏わる史実を基に、長きにわたって実際に著した学者・丁若銓(チャン・ヤクチョン)と、その助けとなり完成に欠かせなかった存在である青年漁夫・張昌大(チャン・チャンデ)の絆を、互いの人生観を交えながら描き通した、貫禄と情緒の溢れる人間ドラマだ。

19世紀初頭の朝鮮王朝時代。キリスト教の弾圧により、熱心な教徒であった学者ヤクチョンは「邪教によって国を乱す大罪人」とされ、最果ての島「黒山島(フクサンド)」に流刑となる。豊かな海と自然に恵まれた島で、貧しいながらも懐深い島民たちに受け入れられ、処罰された割には意外と充実した生活を送れることとなった。ある日、ヤクチョンは若き漁師チャンデと出会い、助けられたことと、海洋生物の魅力に目覚めたことをきっかけに、庶民に向けた海洋学書を著したく思い始める。漁をしながら、学問にも積極的であるチャンデを弟子として互いに教え学びあう関係を築き、時を経て世の中や将来設計を見詰めていくようになる―そういったお話です。

私が思うに、映画とは人間感覚の教科書。その面白さはどういったところか。映画とは感覚。『チャサンオボ』の見どころは、そういったものがハッキリ表れているところ。例えば、主人公がこれまでと違う新しい感覚を覚える場面があり、その演出が的確かつ明白でウィットに富んでいればいるほど、映画の奥深さは増していきます。劇中のチャン・ヤクチョンは「人の生きる道」に関する学問を広く修めてきた知識人ですが、島での生活や人との出会いを経て、いまここで触れられるものについて学び調べ記録し著していこうと考えます。つまり海洋生物について。魚類、甲殻類、海鳥、海獣、海藻類。牡蠣やムツゴロウを見つけては、面白くて興味深くて、「これは何だ、名前は何だ、食えるのか」と興奮冷めやらない。漁師チャンデも最初は「何だ、この人」と敬遠するも、自身が興味を持つ難解な学問の解釈について講義を受けるうちに、先生と呼ばせてほしいとまで慕うようになる。このおじさんと若者。師匠と弟子。先生と教え子。お互いが学びあって教えあって、双方に充実感のあることがハッキリしていて可笑しくていいですね。身分違いの2人が互いに刺激しあえる存在になる面白さ。この人間関係の奥行。これぞ劇的な面白さですね。『チャサンオボ』は人間臭い面白さに溢れています。この師弟関係が、茲山魚譜の執筆が進むにつれてどのようになっていくのか。好奇心を取り戻し、本を書くことに生きる男と、獲っては学び、学んで厚い信頼に気付く男の、見事なドラマ、人生のドラマを見せていきますね。

監督のイ・ジュニクといいますと、韓国時代劇映画の巨匠ですね。『王の男』『王の運命–歴史を変えた八日間–』『空と風と星の詩人 尹東柱の生涯』『金子文子と朴烈』など、ヒューマンタッチの手厚い歴史劇を手掛けてきた大御所です。本作においても、政治や紛争とった背景よりも人物像を特筆する監督術で完成に導きました。主演は『1987、ある闘いの真実』や『殺人者の記憶法』などシネ・ウインドでもすっかりお馴染みの名優ソル・ギョングが俳優人生初の時代劇に臨み、実在したヤクチョンという役と人物に溶け込むように感慨深い演技を披露しています。ジュニク監督とは『ソウォン/願い』以来、8年ぶりのコラボレーション。ギョングとともに映画の核心を担ったチャンデ役のピョン・ヨハンは『監視者たち』『ミスター・サンシャイン』『太陽は動かない』など、着実に話題作への出演続きの人気俳優ですね。本作においても、心情の移ろいや人生の転機、歳を重ねていく人情機微を見事に演じています。これからも大作や大監督との仕事が続くでしょうが、活躍が期待できる俳優のひとりです。

ということで、本作のテーマには好奇心や知識欲があります。これこそ人間的な感覚ですね。いま何かを学んでいる人、これから何かを学ぶ人、学ぶことに疲れてきた人、久しく学ぶことから遠ざかっていた人、たくさんの方に観てもらいたい。学問と明徳、徳の輝きについて。学問と至善、最善に至ることについて。人生がより豊かになるためのヒントがあります。この時代劇を大いに面白がって、涙でストレス成分を減らしてもらい、人生充実の一環となってもらえたら幸いです。

(上映企画部 若槻)

※『金子文子と朴烈』2019年3月、『殺人者の記憶法』2018年3月、『1987、ある闘いの真実』2018年10月、シネ・ウインド上映。

  

2021年 韓国 モノクロ (2時間6分) 韓国語 

配給:ツイン 監督:イ・ジュニク

出演:ソル・ギョング、ピョン・ヨハン、リュ・スンリョン、イ・ジョンウン、ミン・ドヒ

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公式サイト https://chasan-obo.com/  

  

★韓国映画祭2022  2/26(土)~4/22(金)4作品上映! ※火曜定休

2/26(土)~3/11(金) 韓国映画祭2022 第1弾『偽りの隣人 ある諜報員の告白』

3/12(土)~3/25(金) 韓国映画祭2022 第2弾『茲山魚譜 チャサンオボ』

3/26(土)~4/8(金) 韓国映画祭2022 第3弾『ただ悪より救いたまえ』

4/9(土)~4/22(金) 韓国映画祭2022 第4弾『声もなく』

後援:駐新潟大韓民国総領事館

  

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※ご来場の際はマスク着用の上、食事(軽食・菓子含む)はご遠慮ください

※シネ・ウインドは全席「座席指定制」、火曜休館

※劇場受付と公式サイトで上映の13日前より「座席指定チケット」を販売しています。受付混雑緩和のため、事前購入と早めの来場にご協力ください