おすすめ作品『偽りの隣人 ある諜報員の告白』

2022年2月12日
シネ・ウインド

2/26(土)~3/11(金) シネ・ウインド上映 ※3/1・8休館

 ★上映時間→ https://www.cinewind.com/schedule/

 ★劇場受付と公式サイトで13日前より座席チケット販売中 購入はこちら→ https://cinewind.sboticket.net/

 

民主化を目指す政治家と、隣家で監視する諜報員

“正義”とは――

〇『偽りの隣人 ある諜報員の告白』のススメ〇

シネ・ウインド恒例の韓国映画連続上映、今期も実施します。有難いことに韓国映画界の製作熱は未だ衰えを知らず、粒粒辛苦の力作が連発され、シネ・ウインドにも上映案件が続々と届いております。例によって選りすぐりのラインナップで順次開映。2/26(土)から8週にわたり、4作品を上映していきます。その先鋒となるのが『偽りの隣人 ある諜報員の告白』。まずはここから、大いにハラハラして、痛快に愉しんでいただきたい一作です。しかし何でしょう、前川裕さんか、黒沢清さんですか、ジョエル・エドガートンなのか、気がかりな邦題になっていますが、原題の意味は「遠い親戚より近くの他人」という諺なんですね。さらに英題だと『Best Friend』。これをなんとなく頭の片隅にでも入れて観てもらえたらと思います。

この作品について述べたいポイントは大きく3つあります。まず1つめ。そもそもどのようなお話なのか。これは1985年という軍事政権による弾圧が増していく時代の出来事。次期大統領選に出馬予定の野党総裁が国家安全政策部によって逮捕され自宅軟禁されます。彼を監視するため、諜報機関は3人組の盗聴班を設置して隣家に住まわせることに。盗聴班はこの政治家の生活を覗き見、家族とのやり取りを盗み聞きしてその人間性に触れていくうちに…、という内容です。なかなか社会派、政治的な気配がして胃が痛くなりそうと敬遠なさらないでください。詳しくは申せませんが、この隣家の盗聴班3人組が、時代空気の厳しさを緩和するような面白連中で、おやつを詰まらせて死にかけたり、家政婦さんと一進一退を繰り広げたり、任務と一念で体を張るような場面がありまして、見どころのひとつとなっています。

2つめ、『角砂糖』や『7番房の奇跡』を手掛けたイ・ファンギョン監督脚本の6,7年ぶりの最新作であること。『角砂糖』は韓国初の動物映画とのことで、牧場娘と愛馬の家族愛を描き、『7番房の奇跡』は刑務所の連中が無実の罪で収監された父親と幼い娘を再会させてやろうと頑張りを見せていくような面白い傑作でした。この方は寡作ながら見事なヒューマンタッチを持っている作家です。ということで、この映画の男物語、その面白さは納得もんです。

3つめ、いま注目の人気俳優チョン・ウとヴェテラン俳優オ・ダルスの共演作ということ。チョン・ウ、いいですねぇ。『レッド・ファミリー』『セシボン』『ヒマラヤ』『善悪の刃』『王の預言書』、どれもいい。個人的には『善悪の刃』で見せた、野心を含んだ弁護士がどんどん熱血していく演技はとても良かった。顔立ちこそ素朴な感じですが、内面からしっかり味を出すような面白い俳優だと思います。「千万妖精」ことオ・ダルスは『夏物語』や『国際市場で逢いましょう』など多数の出演作を経る名優ながら、2018年のセクハラ暴露騒動によって否認しながらも映画界から一時退くこととなりました。このたび嫌疑なしの判決を受け、活動を再開。本作はスクリーン復帰作のひとつとなっています。いろいろとありましたが、どうあっても演技はやめられないという俳優オ・ダルスがチョン・ウとどれだけの共演をしてみせたか。イ・ファンギョン監督がこの演技をどれだけじっくり見届け映し出すか。映画の面白さはまさにこういうところ。

そういうわけで、『偽りの隣人  ある諜報員の告白』は韓国映画祭2022の第1弾に相応しい秀作です。政治的な真面目一辺倒のサスペンスと思いきや、大間違い。隣家の盗聴班は対象の政治家に話しかけられたり、お子さんに機材を見られたり、作戦がバレそうになってしばしば慌てます。これをどう乗り切ってやるか。その機転と強引さに笑えてきます。そして監督が最も描きたいものは人情。男たちは諜報機関の作戦を通し、数々のピンチを経て、思慮を巡らせていきます。情が移っていくのか、対象を陥れるどころか、放っておけない人情が沸々と湧いてくる。やがては体を張るようにまでなり、服を脱ぐことも厭わない。見事な人情劇になっていきます。出演者が力いっぱい入り込んで演じ切っているのがよくわかります。スリリングで愉快、かつヒューマニズムが尊い一作です。お食事を済ませる前に、どうぞ劇場にてご鑑賞ください。

(上映企画部 若槻)

  

2020年 韓国 (2時間10分) 韓国語 

配給:アルバトロス・フィルム 

監督:イ・ファンギョン

出演:チョン・ウ オ・ダルス キム・ヒウォン

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公式サイト https://itsuwari-rinjin.com/  

 

★3/12(土)~3/25(金) 韓国映画祭2022 第2弾 『チャサンオボ』上映決定!

  

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※2022年2月より、座席収容率を50%とし、「1席おきの着席形式」で営業中

※新型ウイルス感染症対策については公式サイトをご覧ください。

※ご来場の際はマスク着用の上、食事(軽食・菓子含む)はご遠慮ください

※シネ・ウインドは全席「座席指定制」、火曜休館 ※劇場受付と公式サイトで上映の13日前より「座席指定チケット」を販売しています。受付混雑緩和のため、事前購入と早めの来場にご協力ください