おすすめ作品『アイダよ、何処へ?』

月刊ウインド編集部

1/8(土)~1/21(金) シネ・ウインド上映 ※1/11・18休館

 ★上映時間→ https://www.cinewind.com/schedule/

 ★劇場受付と公式サイトで13日前より座席チケット販売中 購入はこちら→ https://cinewind.sboticket.net/

 

1995年、夏。戦後欧州最悪の悲劇「スレブレニツァ・ジェノサイド」 

家族を守ろうとした一人の女性の運命は―

  

〇『アイダよ、何処へ?』のススメ〇

“わずか四世紀半前のボスニアで何が起こったのか。

戦後ヨーロッパ最悪の集団虐殺事件「スレブレニツァ・ジェノサイド」の真実とは”

じっくりご覧いただきたい問題作です。戦争映画、紛争映画とは、激しい撃ち合いの壮絶や爆破爆撃のスペクタクルで見せるものばかりではありません。本作は、セルビア人勢力から逃れるボスニア・スレブレニツァ市民が大勢押し掛ける国連施設で、ある家族に焦点を当てたドラマです。「アイダ」というのが主人公の名前で、国連施設の職員であるおっ母さんの名前です。夫と息子二人を守るため、ちょいと強引にでも施設内に引き入れようとするところから始まります。軍の侵攻で陥落した街からの避難民が大勢いるなか、コネを使ったりして、この国連の基地に夫と息子二人を入れました。ふう良かった良かったと一息入れていると、セルビアの将軍が国連基地にやってきます。無茶苦茶言いながら、入ってきて、「アンタら、ここに残るか、出ていくかを選びなさい。輸送バスは用意するからね」と。国連軍も、アイダも、ゾッとします。避難計画と言っていますが、そのバスに乗ったらね、絶対もう帰らない。家族ともう二度と会えなくなる。待って待って連れてかないで。このお袋さんアイダ。どんどん必死になる。家族のため、息子たちのため。走り回ったり、頼み込んだり、頑張っていきます。どんどん怖くなっていきます。これは事実に基づく1995年の、人類史上の残酷。壮絶悲劇。そんななかでこの家族ドラマはどうなっていくか。どういう最後を見せていくか。もうこれ以上は申せませんね。あとはもう観ていただくしかない。この監督は、それだけ本気です。

本作を何としてでも完成させたかったこの監督、ヤスミラ・ジュバニッチ。かつてサラエボにてボスニア紛争を生き延びたという、この女性作家。2006年に当時32歳にしてボスニア紛争の傷跡を抱えた母親、親子のドラマ『サラエボの花』を監督した、あの映画作家です。近頃、日本でも、韓国でも、ヨーロッパでも、多くの女性映画監督が出てきて、逞しくも優れた作品を発表しています。ジュバニッチ監督は、個人的にいま最も注目している女性監督のひとりです。自身も紛争体験者で、サラエボで集団虐殺に呑まれる可能性もあったというだけに、この「スレブレニツァ・ジェノサイド」という集団虐殺事件について徹底した調査を重ね、これを映画にして世界に発してやろうという、これも執念ですね。映画作家の使命感と、本気の執念。それが演出にこめられて、エラいヒューマンドラマが出来ました。あまり表現や作劇において男だ女だと言いすぎるのもどうかとは思いますが、ヤスナ・ジュリチッチ演じた母アイダの視線と行動力。何とも知れない残酷の気配。ラストシーンの表情。この企画はジュバニッチ監督でなければ完成されなかった。男の監督だったら、これほどの感覚は掴めなかったであろう、恐ろしい緊張の一作です。わたしは去年2021年に観た新作映画のベストでは、本作を6番目に選びました。でも、もっと上にしてもよかった。それだけ、実際の惨劇に対する強固な訴えのエネルギーを浴びました。

 (上映企画部 若槻)

●ボスニア紛争について、公式サイトに詳しい解説がありますので、あわせてご覧ください

https://aida-movie.com/

 

 

ボスニア・ヘルツェゴビナ・オーストリア・ルーマニア・オランダ・ドイツ・ポーランド・フランス・ノルウェー 

2020年 (1時間41分) 〈PG12〉

配給:アルバトロス・フィルム 監督:ヤスミラ・ジュバニッチ

出演:ヤスナ・ジュリチッチ、イズディン・バイロヴィッチ

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