おすすめ作品『とむらい師たち』

月刊ウインド編集部

11/27(土)~12/3(金) シネ・ウインド上映 ※11/30休館

 ★上映時間→ 連日 10:00~11:40  https://www.cinewind.com/schedule/

 ★劇場受付と公式サイトで13日前より座席チケット販売中 購入はこちら→ https://cinewind.sboticket.net/

 ★11/27(土)上映後、上映企画部によるミニトークあり(約10分)

  

三隅研次監督生誕100年記念上映

  

〇『とむらい師たち』のススメ〇

2021年は映画監督、三隅研次の生誕100年。ということで、シネ・ウインド36周年祭の目玉企画として『とむらい師たち』の上映を決めました。時代劇を多く手掛けた三隅監督の、異色ともいえる現代劇のコメディです。ここにシネ・ウインドならではの独自性を目論みました。原作は野坂昭如。脚色脚本は藤本義一。撮影は宮川一夫。音楽は鏑木創。出演は勝新太郎、伊藤雄之助、藤村有弘、多賀勝、藤岡琢也、財津一郎らが顔を揃えます。どういったお話でしょうか。大雑把に申しますと、人間の生き死に、いまの日本人による葬儀葬式とはどういったものか、そういうテーマです。そういう厳粛なものを扱いながら、社会派のヒューマン・コメディに仕上げている。面白いですね。面白いと言ったらアレかもしれませんが、非常に気になるところです。しかも本作は、お察しの通りただのコメディじゃあない。ブラック・コメディなんです。ブラック・コメディって何でしょう。人間の考え、動き、言葉に奇抜なところがあって、笑えてしまいます。ところがそれをジーッと読み込んでいくと、だんだんと怖くなってくる。面白いけど、妙な怖さがある。そういう作劇と芝居です。イギリスやアメリカはユーモア感覚に富んでいるので、昔からそういったスリリングなギャグやユーモアが巧くて流行っています。ところが日本人はどうにも堅くて真面目だから、人を怖がらせて笑わせるというセンスが、作るほうも観るほうも、いまひとつ好まれないんですね。これは日本人の非常に残念なところです。『とむらい師たち』は、一流の作家と一流の映画人たちによって製作されたブラック・コメディです。ここには日本人の真面目さと現代風習への愁い、いまを生きる人間たちの可笑しみが込められています。1968年の日本映画ですが、いまこそこの映画から、人生の締めくくりついて考えを巡らせてもらえたらと思います。

勝新太郎演じる主人公の“ガンめん”は、亡くなった人とそのご遺族に接する仕事をしています。仏さんの表情や筋肉を自然なかたちに整えて、デスマスクを製作するんですね。デスマスクとは死者の顔に石膏を塗ったくって型をとり、遺品として保存するんですね。ガンめんは男のモットー、こだわりをもって仕事をしています。お偉いさんだろうと、ホームレスだろうと、人間みんな亡くなったならみんなが仏。葬儀とは心でするもの。仏さんには愛情と尊敬をもって接すること。そういう考えで生きている男です。ところがいまの日本、葬儀業界ってもんは、葬儀者同士が利益を巡って小競り合いを繰り返す、商売、また商売。儲けのことばっかり追い求めて仏さんへのご奉仕というものを忘れ去っている。このような心無い現代葬儀業界が納得いかず、仲間を誘って自分たちで新しい葬儀屋を始めます。国際葬儀協会といって、お通夜から火葬場まで、仏さんが泣いて喜ぶ葬式を演出してみせるという事業なんですね。これが葬儀業界に新風を吹き込み、商売が軌道に乗っていく。利益が出てきて、機嫌が良くなってくる。事業の上向きはいいが、ガンめんはだんだんと考え込んでいきます。俺たちは仏さんの心を慰めて満足させるという初心を忘れてきてないか。仲間たちを見ると、葬儀による利益のことばかり見ているようになっていたんですね。これはアカンなと考えて考えて、改めて自分の理想に向かうことにします。どうなっていくか。

というわけで、野坂さんと三隅監督は大変な作品を遺しました。衝撃的、という言葉は安易に使いたくありませんが、この作品、男たちの仕事話をじっくり観ていくと、最後の最後はどうなるか。凍りつくかのように呆気にとられます。これ以上は申せません。もう観てもらうしかありません。三隅監督は『座頭市物語』や『子連れ狼』、『女系家族』、『なみだ川』など名作がありますが、『とむらい師たち』は見事な男映画です。撮影は『羅生門』の宮川一夫。日本映画の名キャメラマンが、個性派俳優たちの演技を狙い、どのような結末の画を撮り抜いたか。決して代表作として数えられる作品ではありませんが、それが不思議なくらい豪華で、感慨深く、驚嘆の傑作です。シネ・ウインドでの上映は11/27(土)~12/3(金)の1週間、35ミリフィルム上映となります。新潟での劇場上映はまたとない機会と思われますので、ぜひご鑑賞ください。

(上映企画部 若槻)

  

日本 1968年 (1時間29分)

製作:大映京都撮影所 配給:KADOKAWA 

原作:野坂昭如 脚色:藤本義一 監督:三隅研次

出演:勝新太郎、伊藤雄之助、藤村有弘、藤岡琢也、財津一郎

©KADOKAWA 1968