おすすめ作品『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』

月刊ウインド編集部

10/16(土)~10/22(金) シネ・ウインド上映 ※火曜定休

 ★上映時間→ https://www.cinewind.com/schedule/

 ★劇場受付と公式サイトで13日前より座席チケット販売中 購入はこちら→ https://cinewind.sboticket.net/

  

アジアを代表するスター歌手

“熱狂”と“再生”のドキュメンタリー

  

〇『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』のススメ

2014年香港。中国による、香港行政長官選挙からの民主派排除に対する若者達の抗議活動、「雨傘運動」。街頭を埋めつくす群衆の先頭に、冷静に話し合いを訴える凛とした横顔があった。 

ショートヘアが映える痩身の彼女は香港人なら誰もが知るスター歌手、デニス・ホー(何韻詩)。多感な時期をカナダで過ごし流暢に英語を話すが、追い求めたのは当時の香港カルチャーで、アニタ・ムイ(梅艷芳)に憧れついには弟子入り、歌手になった。 

スカート嫌いの移民少女がスターになるまでをなぞる前半から、愛する師匠を失い、香港をめぐる情勢の激変の中、彼女自身が同性愛者であることを公にするまでが中盤。様々な困難や喪失、そして一国二制度への中国側の干渉に対し抵抗運動に深く関わっていく後半へ。それにより中国本土でのキャリアは断たれ、コンサートのスポンサーをも失うが、彼女は仲間達とともに驚きの奇策でスタジアムを4日間満員にし、絶大な人気を見せつけた。

抵抗と、何かをやっつけることは違う。彼女は敵対や分断を起こしたいのではなく常に、共にあろうとする。時にデモを制圧にきた警察相手さえ、不思議と壁を感じさせずに心をさらけ出す。一人ひとりが彼女と共にあろうと続いたら。それは単純な対立構造を作って煽るより、もしかしたらもっと強い。あんな大国が恐れるほどに。

彼女の姿が問いかける。大切にすべきもの、簡単に手放してはいけないものとは。民主主義の根幹が危うくさえ見える最近の日本で、何かに対し異議があると口に出すことすら嫌う我々に。

政治運動とかアジア情勢とか物騒だし言葉もよくわからない、という人も多いだろう。しかし、彼女の心のままに生み出される新しい歌は、一度ぎゅーっとしゃがんで思い切り弾むような広東語独特の響きに乗って胸に届く。こんなにも美しいものを受け取れる映画はなかなかない。きっと。      

(永井美津子)

  

2020年 アメリカ (1時間23分) ドキュメンタリー

原題: Denise Ho: Becoming the Song

配給:太秦 監督・脚本・制作:スー・ウィリアムズ

©Aquarian Works, LLC

公式サイト http://deniseho-movie2021.com