おすすめ作品『私は確信する』

月刊ウインド編集部

6/26(土)~7/9(金) シネ・ウインド上映 ※火曜定休

 ★上映時間→ https://www.cinewind.com/schedule/

 ★劇場受付と公式サイトで2週間分の座席チケット販売中 購入はこちら→ https://cinewind.sboticket.net/

 ★6/26(土)上映後、シネ・ウインド上映企画部によるトークあり(約10分)

完全犯罪か、冤罪か―

フランス全土の関心を集めた“ヴィギエ事件”を映画化

〇『私は確信する』のススメ〇

本作はフランスで実際にあった刑事事件を基にした映画作品。

“ヴィギエ事件”といわれたこの一連の出来事は、未解決事件のひとつとされ、メディアの報道もあってフランスでは騒がれたものです。

2000年、フランスの地方都市トゥールーズで38歳の女性スザンヌ・ヴィギエが3人の子どもを残して姿を消した。そして夫のジャックに殺人容疑がかけられる。スザンヌの遺体は見つからず、ジャックには殺害する動機もなく証拠不十分で釈放されるも、2009年にトゥールーズで裁判が開かれる。その結果、被告ジャックは無罪となったが、検察が控訴したため、翌2010年のアルビ裁判所で行われる第二審で再び殺人罪に問われることとなった。

この背景は冒頭でも説明されたうえで映画は始まります。しかし凄い話です。スザンヌ・ヴィギエの生死すらはっきりしていないのか、夫ジャックには動機も証拠もないのに逮捕されて裁判にかけられるのか、こんな妙なおかしな事態なのに、実話だというからビックリです。映画はシングルマザーのノラ(マリーナ・フォイス)と弁護士デュポン=モレッティ(オリヴィエ・グルメ)によって、この不可解さが言及されていきます。この裁判劇がどのように進められていくか、そういった社会派サスペンスドラマの注目作となっています。

裁判が開かれるということは、何らかの不利益が生じているわけですね。平穏な生活を送るうえで、出来ることなら、正直関わることなく生きていきたいものです。社会通念に反した行いについての審議は、関係者であるほど、長期化するにつれて経済的にも精神的にも、ときには社会的にも負担が大きい。そして司法制度は人間社会において最も堅実で厳正なものでなくてはならない。法廷や審議に関してはニュース、再現映像、ドキュメンタリー、小説、映画、ドラマなどで描写されてきているので、争いごとや裁判沙汰に縁がない人でも、その実態を想像しやすいものとなっているでしょう。ところがこの映画『私は確信する』を観てみると、ハッとされることと思います。司法は平和な社会になくてはならない制度でありながら、人々の判断によって犠牲者を生んでしまうということ。これがアントワーヌ・ランボー監督の執念。この作品の重要ポイントです。

ランボー監督はこれが長編デビュー作ですが、深い一念をもって演出にあたっています。ジャック・ヴィギエとその家族と対面し、フランスの司法制度や事件捜査処理の杜撰さによる本当の悲劇を実感。もともと熱心な映画愛好家であったこともあり、これを何としてでも映画にしたかった。事件の概要は事実に基づきながら、これに没頭していく主人公を活かして人間の心理劇とドラマを真剣な面持ちで脚色した。事件の当事者たち、裁判の関係者、理不尽ともいえる扱いを受けた被告がどのような言葉を発したか。その家族たちは長期にわたりどれほどの辛い日々を送っていくか。フランス国内のみならず、世界各国にその様相を知ってもらうべく、これを監督したわけですね。その熱心さをじっくり見届けてみてください。

法廷劇というと、その見どころとして人間の粘り強さというか、ある重大な出来事に向き合う執念の姿があるところ。私が好きな法廷劇の名作である『十二人の怒れる男』などはまさにそういったヒューマンドラマを見せますね。そういった真剣さが興味深いものなのですが、『私は確信する』も執念を感じさせる場面があります。主人公は事件関係者の電話音声が記録されたCDの文字起こしに努めます。これが約250時間もある分量で気が遠くなるような作業ですが、被告の娘さんは自分の息子の家庭教師でもあり、彼女のためにも真相を明かしてやりたい考えがあるんですね。この主人公は架空の存在ですが、モデルとなっている人はおりまして、半分はランボー監督の分身ともされています。そんな目論見や欲求をもって事件に没頭していく姿。調査、審議する場面は、現実だろうと劇中だろうと人間が最も粘り強くなる瞬間かもしれませんよ。世界各国で製作される法廷ドラマはそういった人間局面を感じさせて目が離せなくなりますね。

ただ『私は確信する』という映画、その執念の描写から、さらに踏み込んだ演出を見せます。映画の大きな見どころのひとつとなるので、あまり詳しくは申せません。けれども監督がこの映画に込めた訴えは、正義感のかたちです。ここにこの映画ならではの新しさや怖さがあります。マスコミによる煽情報道が繰り返され、SNSなどの匿名性が発達を遂げた現代社会における正義感のいろいろ。その感覚や感情が、不公正をもたらす悲劇。映画を観ると、これが製作の重要点であることに気づきます。本作はこの事件によって苦しい時を過ごした人たちへ捧げられています。同時に警察組織や司法制度のあり方について、多くの人々が見つめなおし考えてみるきっかけになればという思慮が含まれています。これはただの事件もの、ただの裁判ものではありません。そして深刻一点張りの記録ものでもありません。「司法の失敗による犠牲」がこれから決して出ないようにと願われた、フランスからの第一級サスペンスドラマです。ぜひ劇場にてご鑑賞ください。

 (上映企画部 若槻)

『私は確信する』

2018年 フランス (1時間50分) フランス語 

原題:Une intime conviction

配給:セテラ・インターナショナル

監督・脚本・脚色・原案:アントワーヌ・ランボー

出演:マリーナ・フォイス オリヴィエ・グルメ ローラン・リュカ フィリップ・ウシャン

©Delante Productions – Photo Séverine BRIGEOT

公式サイト http://www.cetera.co.jp/kakushin/