Noism×鼓童『鬼』2023.12.17千穐楽レポート

荒木夏実

荒木夏実

楽しみにしていた12月17日千穐楽。

私にしては珍しく余裕を持って家を出ることができ一路りゅーとぴあへ。しかし、途中で財布を失くしたことに気付き『お菊の結婚』を観ることが出来なかった。

やっとの思いで会場に着き待ちに待った『鬼』開演。私は鼓童も『鬼』も初鑑賞。幕が上がると驚く光景。ステージが上下に分かれている。正しく言えばステージの上に櫓が組まれ上が鼓童、下がNoismのステージになっている。そんなことよりも、私が鼓童に抱いてるイメージ≪大きな和太鼓≫が無い!それどころか≪和太鼓≫自体が探さないと見つからない。琴、シンバル、笛、見たことのない民族楽器が所狭しと並んでいる。

音が鳴り始める。Noismメンバーが次々とステージに現れる。鼓童が奏でる音楽が中国から日本、オーストラリアのアボリジニの民族音楽を行き来している感覚。開放で鳴らしているような音、どの楽器が奏でてるのか分からない音、音の数の移り変わりと強弱。既存の音楽に慣れていると狂いそうな音楽を叩きつけられる。何の楽器がどう音を出しているのか気になって仕方がない。その下ではNoismが舞う。山田勇気さんが腰を落とし右片足立ちから浮かせた左足首をクルッと返して僅かにヨロリと立ち上がる動き。クルッとヨロリのアクセントがとても魅力的。ヨロリはバランスが崩れたのかな?と疑うような動きだけれど間を空けて繰り返されたそれは寸分狂わず同じ動きをしていて「ここまで自分の身体を知って動かせるのがNoismなんだ」と感動した。

そして井関佐和子さんの鬼が登場。まるでアメリカのディーバのミュージックビデオに出てきそうな、ボディーラインが全て出ている衣装にビックリするも、動きの美しさとステージ上での井関さんの迫力が衣装を超えてくる。そして度肝を抜くのは鬼(井関さん)が人間櫓で中央まで上がる場面。上のステージにあるシンバルや銅鑼などの金属打楽器がどんどん音を大きくする。鬼が上へ上へと上がり頂点に辿り着く頃には、何十個もの金属音が鳴ってるかのように完全飽和し、鬼の目が狂い咲く。一歩間違えれば下品になりかねないくらいの音の圧力、音量だけれど、それを子分にしているかの如く負けない井関さんの表情、存在感が圧巻。井関佐和子さんは凄い。

ここまででお気付きになる方もいると思う。そう上の鼓童と下のNoismを満足出来るまで見るためには目がもう1セット無いと難しいのだ。

鼓童がこんな狂った音楽が出来る集団とは全く思ってなかった。そもそも作曲の原田敬子さんが天才的だ。不協和音のような音の重なりから単音の表現とその移り変わり、成立してないように成立させる巧妙さ。そして鼓童が繊細に楽器を操りダイナミックに届けてくる。鼓童が世界で活躍する理由を体感できた。

そして、この音楽で舞踊をやろうとするNoismがまた凄い。合わせて手拍子も出来ない音楽だ。しかも録音ではなく生演奏。楽器だけのセッションなら楽しい。誰かに共鳴して、他の誰かも誰かに共鳴して段々と全員が共鳴すると快楽のゾーンに入るあの感覚。けれどあの音楽を相手に踊りでセッションをするのは心、身体の余裕が持てない気がする。そこに立ち向かうNoismの冒険心と作り上げる根性にただただ尊敬してしまう。

≪鼓童の音楽≫だけでもお腹いっぱい≪Noismの舞踊≫だけでもお腹いっぱい。満腹満足の内容。けれど、「果たして片方だけで満足出来るか?」と問われれば「違う」と浮かぶのだから共鳴で出来上がっている半端ない舞台だ。

≪舞踊の鬼≫と≪音楽の鬼≫が生で共鳴するNoism×鼓道『鬼』。2022年の『鬼』を観ていないが為に、生き物の変化を観る楽しみを私は経験できなかった。再演を期待する。変化した『鬼』を観たい。定期で演ってくれないだろうか。

ヨーロッパでなくても新潟でこんな舞台をつくる集団があるなんてと、食らい疲れボーっとした頭で帰路に着いた。


Noismサポーターズ(非公式)のホームページで他の公演のレポートに加え、終演後のトークも一部ご覧になれます。
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