上映企画部だより 2025/9/26

若槻

シネ・ウインド上映企画会議 毎週土曜19時~

 日々ネタが尽きなくて胃が収縮していますが、なんでも旧Twitter界隈では「無言の帰宅」がどういう意味か通じない人たちが現れだしたそうです。行方不明だったご家族が、警察からの連絡を受けて、無言の帰宅となりましたと報告したところ、「それは良かったですね!」と返信している人がわらわらおりますよ、と。そりゃ無言にもなりますよ情けない。

 そうしましたら「今では『二階級特進』や『身内の不幸』が何を意味するのか知らない人が紛れ込んでいる。そのうち『旅立った』とか『眠りについた』も意味が通じないようになるのでしょう」という発言まであって、さすがにブラックジョークかと思いたいですね。

 活字離れ、テレビ離れとはよく聞きますが、特に漫画、アニメーション、映画、ドラマは粗製乱造・大量生産大量消費が繰り返されたことによって、名作傑作こそ埋没していくような事態です。では最近のトレンディって何なの?と思っていたらTikTokだそうです。今や広告だらけのYoutubeですらない。数十秒の動画からトレンドや流行をキャッチするような世の中。そんなこんなどうでもいいようなショート動画が溢れかえり、日本人の国語力は低下の下り坂、ダウングレードのフェード・フェノミナンだそうです。

 わたしたちも普段からお気軽に外国映画を鑑賞したり、月刊ウインドに寄稿したり、こうしてコラムをアップしていたり、言語の用法・用量を守って正しく使いましょうと気を付けなければいけない立場にありますが、普通教育を受けさせる義務や教育機関、家庭、教育を受ける側などに対して「英語よりもまず国語力を養えよ」と呆れ含んだ申し立てられている現状に放屁するくらい苦笑いしました。

 誤用、曲解、勝手な別解釈、時代の移り変わりで意味が変わったことまで、日本語とは非常に厄介もんですね。「損害の被害を被る」とか「12時10分前」とか「耳障りのいい」とか。「十中八九」もプロの俳優、声優ですら「じゅっちゅうはっく」と言ってディレクションでOKが通ってるくらいですからね。言葉の乱れ過ぎから日本人はしばらく無言になってみたほうがいいのでしょうか。

 単純に用法用量を正しく守ることは勿論ですが、文脈や行間を読むことですね。読解力というものでしょうか。いまの日本人が最も失いつつある能力ですね。わたしたち上映企画部は「これは良いものだから是非ご覧ください」と伝えるため、真っ先に読解力を発揮しないといけないわけです。目に見えるものから読み、次に見えないところまで読み込み、真面目に愉快に日本語を繰り出していくわけです。映画を面白そうに紹介して解説してくださる方々は皆さん亡くなってしまいまして、わたしたちに映画案内がどこまで務められるか、まだ何とも言えないようななか試行錯誤している状況ですが、どこかで上映企画部からの発信をキャッチしてもらえたら、ニヤニヤ嬉しそうです。たぶん。絶対。

若槻健人

シネ・ウインド上映企画部では、上映作品の選定や、作品紹介をお手伝いしてくれる方を募集しています。上映企画会議は毎週土曜19時より、事務所2Fフリースペースにて。映画館の運営に興味がある方、見学・入部など、お気軽に劇場スタッフにお声掛けください。