シネ・ウインド上映企画会議 毎週土曜19時~
朝の映画館にて
先日、少し早起きをしてとある映画館へ行きました。早い上映時間だったので、館内にはまだゆったりとした静けさがあり、ロビーには朝の空気が漂っていました。チケットをスタッフの方に確認してもらい、足音だけが響く静かな通路を抜けてスクリーンへ向かいます。やわらかい照明や人の気配がまばらであることが、日中の映画館と違い少し日常を離れたような気持ちになりました。
この日観た作品は『ミッキー17』。王道なSF作品でありながら、それでいて現実的な物語でした。“使い捨て労働者”である男の前に、もう1人の自分が現れたことで過酷な労働環境に逆襲を始めるSFブラックコメディです。「働く」という行為や、その仕組みについて、SFの世界観の中でありながらも鋭く、そしてユーモアある皮肉を込めて描いていました。思わず笑ってしまう場面もありましたが、ただ笑っていてばかりはいられないような内容で、そのバランスがとても見事でした。


上映企画部に参加するようになってから、映画を鑑賞する際に「なぜこの作品を上映するのか」「どこに魅力があるのか」といったことを意識するようになりました。
『ミッキー17』には「ただの娯楽で終わらせたくない」という意図が込められているのだと考えます。何か心に残るもの、引っかかるものを持ち帰ってほしいという願いが感じられました。クローン技術や極限労働、自己のアイデンティティといったSFならではの設定の中に、今の時代に生きる私たちが無視できない問いが潜んでいるように思えたのです。「自分であること」は何によって決まるのか。効率や合理性を追い求める社会の中で、人間らしさとは何か。「個の尊厳」を守ることについて。作品が提示する世界は突飛に見えて、どこか私たちの現実と地続きのようでした。
SF作品が最近、妙にリアルに感じるようになってきたのは、こういった意図が背景にあると考えられるようになったかもしれません。
まだ寝ぼけてしまっている朝の時間帯に観るには、少しエネルギーを使う作品でしたが、それも含めて印象に残る映画体験になったと思います。
宮下千宙
ポン・ジュノ監督作品『ミッキー17』新潟市内での上映劇場は「Tジョイ新潟万代」さん、「ユナイテッド・シネマ新潟」さん、「イオンシネマ新潟亀田インター」さん、「イオンシネマ新潟西」さんでの公開となっております。(2025年4月21日時点)
シネ・ウインド上映企画部では、上映作品の選定や、作品紹介をお手伝いしてくれる方を募集しています。上映企画会議は毎週土曜19時より、事務所2Fフリースペースにて。映画館の運営に興味がある方、見学・入部など、お気軽に劇場スタッフにお声掛けください。