上映企画部だより 2025/2/2

若槻

本稿は他館にて上映中の映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』とその公開状況についての感想となります。

 ドニー・イェンがいま一番どうかしてる映画人だとしたら、谷垣健治さんもやっぱりどうかしてるアクションコーディネーターですね。命懸けでアクション映画を作っていないと生きていけないというか。もちろん安全対策も徹底しているでしょうけど。この映画がどういうものかは、いいでしょう。東京の映画館を中心に既にたくさんの方が熱いレビューを投稿されています。『ドラゴン×マッハ!』の監督、『天使の眼、野獣の街』『マスターZ/イップ・マン外伝』の脚本(脚色)チーム、『イップ・マン』シリーズのプロデューサー、ジョニー・トーの右腕を務めてきた撮影監督、『孫文の義士団』の美術監督、お馴染みの川井憲次さんと第一級スタッフ総動員による鬼のような殺伐活劇と人情譚。

 この映画を観た方々の好評は全国的に続々と上がっていて、久々の香港映画の大作が当たったことによる喜びや、かつての香港や九龍城砦についての感慨とか、若い人たちの中にはこの映画で初めてサモ・ハンやルイス・クーを知った人も少なくないようで、これまでどんな映画に関わっていたのかが気になって探り始めていると、古参の映画ファンが嬉しそうに指南している局面も。映画の造りがあまりに荘厳かつ熱情的なので、2回目、3回目を観てもっと分かりやすくなった、もっと知りたくなったという声が。普段、映画を観ない方々にとって「特に映画館で観た同じ映画をまた観に行く」ことがあまり考えられないようであるだけに、この映画が日本人に熱を伝えているのは凄いことだと思います。それだけこの映画は熱いし、厚い。明らかに荒唐無稽なところもあるが、馬鹿な映画ではない。これも凄いことだ。

 九龍城砦に辿り着いたレイモンド・ラムに、ルイス・クーがこの場所がどういう処なのかを教えて回る場面は、『エイリアン3』でフューリー刑務所を案内するチャールズ・ダンスとシガーニー・ウィーバーを思い起こさせて、初っ端から独り涙ぐんでいたら、そこから次々と、忠誠心やら友情、恨み、野心、住居愛など込み入ってきて、谷垣さんの豪快なアクション設計が猛威を振るう、予断を許さないような展開を繰り広げながら、とうとう映画詩的なラストに至っていた。映画を観たあとにポケットから落っこちた駐車券がそのまま見つからなくなったくらい、この映画は感慨深かった。SNSが普及した現代、この映画の満足感が上手く地球言語化できないくらいだという声が挙げられている。それだけに日本全国的な公開規模の少なさを嘆く声もある。いま日本から外国映画への興味関心が薄らいで、クラシックや旧作は忘れ去られていく。映画業界の課題や流行について思案すべきことは多いが、『九龍城砦』が完成して届いたことが、映画界の将来を照らすような、老若男女へ様々なきっかけのひとつとなってもらいたいですね。(宇尾地米人)

2月現在、上映についてアンケートを実施しています。よろしければ劇場や作品についてご意見・ご感想をお聞かせください。毎週土曜日の上映企画会議にて参考にいたします。

また、書棚横に設置してありますロビーノートにも映画の感想などご記入いただけます。こちらは月刊ウインドに感想のコメントが掲載される場合がありますので、よろしければ一筆をお願いします。

シネ・ウインド上映企画部では、上映作品の選定や、作品紹介をお手伝いしてくれる方を募集しています。上映企画会議は毎週土曜19時より、事務所2Fフリースペースにて。映画館の運営に興味がある方、見学・入部など、お気軽に劇場スタッフにお声掛けください。