フェイシズ〈ジョン・カサヴェデス レトロスペクティブ リプリーズ〉

フェイシズ〈ジョン・カサヴェデス レトロスペクティブ リプリーズ〉
2023/11/111/9
フェイシズ〈ジョン・カサヴェデス レトロスペクティブ リプリーズ〉

実業家のリチャードは、ある夜、仕事仲間のフレディと高級娼婦のジェニーを誘い、彼女の家でパーティーをする。3人は無邪気に大きな声で歌ったり、踊ったりと大騒ぎする。しかし、次第に3人の心の中の孤独感が露わになり、どこか寒々しいものへとなっていく。そしてついには、ジェニーを巡ってリチャードとフレディの間にいさかいが起きり、フレディは帰っていく。ジェニーはやりきれず、リチャードに心の支えになってもらおうとするのだが、彼はそれに応えることが出来ず、去っていく。
 複雑な思いを胸に家に帰るリチャードは、電話中の妻マリアの電話を奪い、大事な話があると言う。結婚して14年に立つ二人の間にはもはや埋めることのできない溝があり、リチャードは「離婚したい」と切り出す。ショックを受けるマリアをよそに、リチャードはその目の前でジェニーに電話をかけ、家を出る。待ち合わせのバーでジェニーを探すが、彼女はそこにおらず、家でもう一人の娼婦と共に、マッカーシーとジャクソンという二人の相手をしていた。そこにリチャードが現れる。リチャードは二人にからまれるが、何とか追い出すことに成功する。そして、その夜二人は結ばれる。
 一方、マリアは女友達と4人でディスコへと繰り出す。踊る若者たちの中で場違いにじっと座っている彼女らに、遊びなれた青年チェットが話しかけてくる。マリアは彼にひかれ、友人たちと彼を家に連れて帰り、パーティーを始める。堅実な妻たちと奔放な若者の間にある違和感を抱きながらも、一人の男を巡って4人の女たちの心は乱れ、やがて友人たちは帰っていく。そして、マリアとチェットは結ばれる。
 翌朝、マリアは自分のしたことの重大さに気づき、うろたえる。マリアは混乱し、睡眠薬で自殺を図ろうとする。チェットはバスルームで倒れているマリアを発見すると、懸命な介抱のかいもあって、マリアは意識を取り戻す。マリアの混乱はチェットの心を強く揺さぶる。そんなところにリチャードが帰宅する。チェットはあわてて逃げていく。ショックを受けたリチャードはマリアを罵るが、もはや二人の間に愛は無い。気まずい沈黙が流れる中、二人は所在なく階段に座り込み、口をつぐんだまま孤独と静けさが辺りを包んでいく。