キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩

キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩
2023/7/298/11
キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩

第2次大戦下、領土を奪われ翻弄される
ウクライナ、ポーランド、ユダヤ人の3家族が
大地と子どもたちを守り抜こうとする運命の物語
 クリスマスキャロルとして有名な「キャロル・オブ・ザ・ベル」は、ウクライナで古くから歌い継がれている民謡「シェドリック」に1916年“ウクライナのバッハ”との異名を持つ作曲家マイコラ・レオントーヴィッチュが編曲し、英語の歌詞をつけたものである。映画『ホーム・アローン』(90)内で歌われ、世界中に知られるようになった。この歌は「ウクライナ語、ウクライナ文化が存在している」という明確な証として今も歌い継がれている。


なにがあっても、生きる。

 1939年1月、ポーランドのスタニスワヴフ(現ウクライナ、イヴァーノ=フランキーウシク)にあるユダヤ人が住む母屋に店子としてウクライナ人とポーランド人の家族が引越ししてくる。ウクライナ人の娘ヤロスラワは音楽家の両親の影響を受け歌が得意で、特にウクライナの民謡「シェドリック」=「キャロル・オブ・ザ・ベル」は、歌うと幸せが訪れると信じ、大事な場面でその歌を披露する。第2次大戦開戦後、ソ連による侵攻、ナチス・ドイツによる侵攻、再度ソ連によって占領される。ポーランド人とユダヤ人の両親は迫害によって離され娘たちが残される。ユダヤ人の娘ディナ、ポーランド人の娘テレサの3人の娘たちをウクライナ人の母であり歌の先生でもあるソフィアが必至に守り通して生きていく。
 戦況は悪化し、子どもたちを連行しようとソ連軍が家探しを始めるが、ソフィアが機転を利かせて最悪の事態は免れる。ナチスによる粛清によってウクライナ人の父の手に及び処刑されてしまう。残されたソフィアは、ウクライナ人である自分の娘、ポーランド人の娘、ユダヤ人の娘に加えて「この子には罪はない」と言ってドイツ人の息子を匿うことになるのだった…。