夜明け前のうた 消された沖縄の障害者【沖縄ドキュメンタリー映画特集】

夜明け前のうた 消された沖縄の障害者【沖縄ドキュメンタリー映画特集】
2021/12/251/14
12/31(金)・1/1(土)は休館
夜明け前のうた 消された沖縄の障害者【沖縄ドキュメンタリー映画特集】

※【沖縄ドキュメンタリー映画特集】4作品日替わり上映

知られざる沖縄の犠牲

『一部の犠牲はやむを得ない』…これは日本国家の根幹にあり続けている考え方です。 戦後、サンフランシスコ条約によって沖縄を日本から切り離したことは、その象徴と言えるかもしれません。その後の米軍基地の沖縄への集中も同じです。その考えは地域社会においても、日本の隅々まで貫かれてきました。
 私宅監置。1900年制定の法律に基づき精神障害者を小屋などに隔離した、かつての国家制度です。精神障害者を犠牲にし、地域社会の安寧を保とうとしてきたのが日本です。1950年に日本本土では禁止になったこの制度は、沖縄ではその後1972年まで残りました。やむを得ない犠牲として沖縄を見限った、日本国家の考えそのものと言えます。

 隔離の犠牲者は人生を奪われ、尊厳を深く傷つけられましたが、公的な調査や検証は行われていません。傷つけられた魂は天に昇ることができず、今もこの世を彷徨っていると思います。家族の恥、地域の恥、ひいては日本の恥として闇に葬られてきた歴史です。本当に恥ずべきは、隠し続けることではないでしょうか。
 この映画は、小さくされ、犠牲を強いられたごく一部の人びとのことを、あえて見つめる映画です。犠牲になってもやむを得ない命は無いからです。闇の歴史と向き合うことで、初めて開くことのできる光の地平があると信じます。