ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。

ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。
2021/12/1112/24
ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。

葛藤、断絶、そして58年ぶりの劇的な再会…

熊本県で訪問介護の仕事をしている林恵子、67歳。子どもたちはすでに独立。休日は友人らとカラオケや居酒屋に通い、一見平穏な日常を送っている。
しかし恵子には、家族や親しい友人にも語ってこなかった、ある秘密があった。それは実の姉が北朝鮮にいるということ。20歳上の姉、愛子は1960年に在日朝鮮人の夫とともに北朝鮮に渡っていった。渡航後、手紙で伝えられる姉の変貌ぶりに、恵子はやがて落胆し、反発。そして絶縁する。その後、日朝関係は悪化し、互いに音信不通の状態に。58年の歳月が流れていった。

そんなある時、姉の消息が知らされる。人生の残り時間が少なくなる中、姉への思いが再び頭をもたげ始めた恵子。「拉致されたらどうするんだ」という子どもたちの反対を押し切り、恵子は訪朝を決意。人生初めての海外旅行が北朝鮮となった。
“謎の隣国”で目にする未知の世界。それはその後の恵子の人生をも変えていく…。
半世紀以上にわたり、政治や時代に翻弄されてきた家族たちの姿を描く異色のドキュメンタリー作品。


帰国事業とは
1959年から1984年にかけて行われた在日朝鮮人とその家族による北朝鮮への集団的な移住。日朝両政府のそれぞれの思惑から始められ、当時の日本中のメディアも北朝鮮を「地上の楽園」と持ち上げ、後押しした。
9万3千人以上が参加したが、そのほとんどが実際は、朝鮮半島南部、現在の韓国の出身者だった。国民的な熱狂の中、送り出された「帰国者」の中には日本人の妻、約1,800人が含まれていた(子どもを含めると日本国籍保持者は約6,600人)。「3年経てば里帰りできる」。当時流布されていたその言葉を信じ、未知の国に渡った日本人女性たち。しかしその後、日朝政府間の対立が続き、彼女たちの消息はほとんどわかっていない。