どこへ出しても恥かしい人

どこへ出しても恥かしい人
2020/9/199/25
どこへ出しても恥かしい人

ミュージシャン、画家、詩人としてカルト的人気を誇る友川カズキ。1974年 にレコードデビュー、代表曲に「生きてるって言ってみろ」、ちあきなおみに提供(作詞作曲)した「夜へ急ぐ人」などがある。画家としても活動を始め、1985年に初の個展を開催。その多彩な表現活動は、中上健次(作家)、大島渚(映画監督)ら多数の芸術家、文化人から惜しみない賛辞を浴びた。本作は、異形のアーティスト、友川カズキの2010年夏の記録を収めたドキュメンタリーだ。
一部では高く評価されながらも、広く大衆に受け入れられることはなく、川崎の小さなアパートで今も粛々と暮らしている友川。20年来、どっぷりのめり込んでいるのが競輪で、3年ぶりに会う大学生の四男までも競輪場に連れ出し指南するほどのハマりっぷり。本人は「競輪が病気なら、生涯治らないでほしい」と豪語する。いくら負けても大穴狙いで、競輪仲間には滅多に当たらないとも言われている。それでも、今日もまた一日の大半の時間を競輪場に出向くか、あるいは家でのレース予想に割いている。映画はその生活の一部始終をカメラに捉えていく。部屋のTVの前で、競輪場で、車券を握りしめて叫ぶ姿、近所の公園の噴水で水浴びをする姿、そして絵を描き、ライブで歌う姿……この現代にあって奇跡的ともいえる無頼詩人・友川カズキの慎ましくさえ見える日常の中で、もはやギャンブルや音楽というジャンルに収まりきらないほどの熱量が表出する。またこの映画の為に、石塚俊明、永畑雅人らと車中で演奏したシーンも見どころのひとつだ。
そして、冒頭から競輪の予想を外し続ける友川は果たして劇中で万車券を手にすることができるのか。その悲喜こもごもの顛末や如何に!?