シネ・ウインド会員になったのは3年前。ドキュメンタリー「グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独」(ひどい邦題!だが内容は素晴らしい)を観た後に入会手続きをした。

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クラシック音楽には疎いのだが、なぜか グレン・グールド だけは惹かれるものがあり、「ザ・コンプリート・オリジナル・ジャケット・コレクション」というBOXセット(全80枚組!)まで持っている。

グレン・グールドは語る (ちくま学芸文庫)

楽曲としてのピアノ演奏だけでなく、低い椅子に座り猫背で前のめりの姿勢でハミングしながら弾く姿、才気とユーモアに溢れたインタビューや文章も大好きだ。

「コンサートは死んだ」と言い、絶頂期にステージから姿を消し、その後は”レコード芸術家” として生きたエピソードに満ちた生涯にも関心がある。

ということで、今回は、筆者のグールド体験について書いてみます。

風の歌を聴け

浜松に嫁いだ姉には男の子が3人いて、高校卒業まで、毎年、誕生日プレゼントを送った。一番上の甥が中1になったとき、ピアノを習っていると聞いたので、何かCDでもと思ったがクラシック音楽となると皆目見当がつかない。

Beethoven: Piano Concerto No. 3 in C Min

 
村上春樹のデビュー作で名前だけ知っていたグレン・グールドのCDを選んだ。


「〈カリフォルニア・ガールズ〉の入ったビーチ・ボーイズのLP。」

「それからベートーベンのピアノ・コンチェルトの3番。」
「グレン・グールドとバックハウス、どちらがいいの?」
「グレン・グールド。」

「〈ギャル・イン・キャリコ〉の入ったマイルス・デイビス。」

風の歌を聴け

 
「僕」が「鼠」の誕生日プレゼントに買った3枚のレコード。
グレン・グールドだけ知らなかったので妙に記憶に残っていた。25年前のことである。

ゴールドベルグ変奏曲

10年くらい前に、仕事で疲れてロックやパンクを受け付けない時期があった。頭や心を休めたいときは、できれば日本語でない(言葉を理解できない)ゆったりとした音楽、クラシックがわかる人はクラシックが良いらしい。

普段は足を向けないTSUTAYAのクラシックコーナーを眺めると、グレン・グールドが1枚だけあった。『ゴールドベルグ変奏曲』。1955年、グールド22才のデビュー作だ。バッハか。甥にプレゼントしたベートーベンではないけど、まぁいいかな。

バッハ:ゴールドベルク変奏曲(55年モノラル盤)

 
初めて聴いたグールドの演奏はとてもドライブ感があり、単純にカッコいいと思った。2分間のアリアを我慢して第1変奏に入ると一気に駆け抜けていく。ロックのような躍動感、パンクのような疾走感すら感じる。ゴールドベルグ変奏曲は「カイザーリンク伯爵の不眠症をいやすために作曲した作品」ということだが、逆に頭が冴え渡る感じ。

その頃買ったiPodで、毎朝、通勤でゴールドベルグを聴いた。

バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年録音)

映画『羊たちの沈黙』でレクター博士が手錠を外して逃げるシーン。ポータブルカセットから流れていたのは1981年盤のゴールドベルグである。(というのをだいぶ後から知った)かなりゆったりとしたテンポで弾かれるこのバージョンは哲学的な雰囲気すら感じる。

1982年、脳卒中により急逝。享年50歳。「ゴールドベルグ変奏曲」の再演が遺作となった。

グールドのバッハ

オリジナルアルバムをひと通り聴いてみると、自分が特に惹かれるのはバッハの作品であることがわかった。

ボイジャーのゴールデンレコードにも納められた清々しい「平均律クラヴィーア」、変化と流れのある「パルティータ」、軽快で心が浮き立つような「フランス組曲」 、パイプオルガンで録音された「フーガの技法」、ジャケットもカッコいい「小プレリュードと小フーガ集」などなど、、、

リトル・バッハ・ブック


グールド自ら選曲した編集盤「リトル・バッハ・ブック」は曲順が完璧。今でいうお気に入りプレイリストか。

今思うと、たまたま最初に聴いたグールドがバッハだったのは運が良かった。

精神的に参っていた時期をなんとか乗り越えられたのはグールドのバッハのおかげだ。ロックもパンクも再び聴けるようになった。

ありがとう、グレン・グールド。

観るならこれを!

音楽つながりということで、こちらはロックの革命児、ジミ・ヘンドリックス

JIMI:栄光への軌跡_web

JIMI:栄光への軌跡

●5/30土~6/12金

ジミヘンが世界に衝撃を与えた1967年のモンタレー・ポップ・フェスティバルの直前までを描いた作品(らしい)。

1967年といえば、サイケデリック・ムーブメントがピークに達した「サマー・オブ・ラブ」、スウィンギング・ロンドンと60年代ポップカルチャーのエポックメイキングな年だ。

伝記映画というジャンルは好みではないけど、リンダ役 イモージェン・プーツの60年代ファッションが楽しみです。


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この辺りの者でござる

アラサーどころかアラカンに近づきつつあるが「おもしろきこともなき世をおもしろく」生きていくことを心がけている。嫌いな言葉は「自分探し」。